麹の気持ち

米麹のクローズアップ

千年の菌が語る、
日本の味の起源。

日本の食と発酵の物語

播磨国風土記のイメージ
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なぜ、カビが神様への捧げ物になったのか。

奈良時代、播磨国に記された一節。旅の途中、伊和大神が携えた糒(ほしいい)にカビが生えた。捨てるには惜しい、とその米を水に浸し、酒を醸した。それを神に献上したという。

これが日本に現存する最古の酒造りの記録とされる。腐敗に見えたものが、発酵だった。カビが「穢れ」ではなく「恵み」として受け取られた瞬間に、日本の発酵文化の原点がある。

種麹屋のイメージ
中世

秘伝の技を握った者たちが、日本の食を動かした。

平安から室町にかけて、麹の製造は「麹衆」と呼ばれる専門集団が独占した。1246年、石清水八幡宮の記録に、麹をめぐる業者間の争いが記されている。それほどまでに、麹は価値ある商品だった。

やがて木灰を用いた純粋培養技術が確立され、「種麹屋(もやし屋)」という職人が生まれた。彼らが菌を管理し、醤油・味噌・酒・みりんの土台を支え続けた。

江戸の甘酒売りのイメージ
江戸

夏の夜、天秤棒を担いだ声が、江戸を流れた。

「甘酒〜、甘酒」。江戸の夏の夜、行商人たちは天秤棒を担いで路地を歩いた。一杯8文。甘酒は江戸中期以降、俳句の「夏の季語」となるほどの夏の定番だった。

砂糖が高価だった時代、米麹の自然な甘みは貴重な糖分補給源だった。ビタミンB群・アミノ酸を豊富に含むその姿は、今でいう「飲む点滴」に近い。庶民の知恵が、栄養学より先に答えを出していた。

2006 麹菌、日本の「国菌」に認定

日本醸造学会が麹菌(Aspergillus oryzae)を「国菌」として認定。科学的価値・文化的価値・産業的価値、そして安全性の三点が評価された。
清酒・焼酎・醤油・味噌・みりん・酢。日本の発酵食品のほぼすべてに、この菌が関わっている。

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